細雪
日の出から日の入りまで穏やかに、青空が気持ちいい一日でした。 そして今、十六夜の月が昇ってきましたよ。
大阪、船場の旧家に生まれた四姉妹の、昭和13年から16年にかけてのほんの短い時間を舞台にした谷崎潤一郎の小説。 大阪、神戸、京都、東京の、ゆっくりと戦争に向かう時代がその背景で、歴史を知っていて読むからうすら寒いというか怖いというか、そんな雰囲気が行間に漂ってる名作なんやね。
日本は中国に戦争を仕掛けていて、ヨーロッパではドイツが戦線を広げていく。 物語が終わるのが昭和16年の春だから、太平洋戦争をはじめるまではわずか半年。 第一次世界大戦に勝って、そこからいい時代が続いていたのが、加速度をつけて嫌な時代に向かって落ちていく。 その下降線に抗うすべもなく、四姉妹の生活は窮屈になっていく。
現代に比べると、辛気臭いくらいに時間がゆっくり流れていく。 実際のこの時代、朝に大阪から急行列車に乗っても東京に着くのは夕方だし、手紙が届くのも翌々日くらいなのかな。 長距離の電話は、申し込んでから交換手が実際に繋げてくれるまでは相当時間がかかるようだし。 そんなゆっくりと時が流れてた時代の生活がなぜか懐かしく、読んでいて、そして電気を消して眠りに就こうとすると、昔見た阪急の梅田駅や神戸の風景が暗い中に浮かんでくるんです。
画像。 大阪、梅田にて。
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